今回は、鴨長明により書かれた方丈記について解説します。方丈記は日本3大随筆と言われる名著中の名著です。
1212年に著され、800年も昔に書かれた本ですが、今の政治の大変動、天変地異を体験した上でのミニマリストとなった境地は、最高におもしろく、現代に生きる私たちにも参考になるところが多いです。
日本最古のミニマリストかもしれませんね。
この記事では、方丈記と鴨長明の解説、そして、方丈記から学べるものを解説します。
それでは、一緒に見ていきましょう。
方丈記とは
方丈記は、枕草子(清少納言)、徒然草(吉田兼好)と並ぶ日本3大随筆で、作者は鴨長明です。
作品が書かれのは1212年、約800年前の鎌倉時代です。当時の歴史的な大災害や政治の大変動の描写が実にリアルで、平家物語などの歴史書は、方丈記の文面から作られた描写もあります。それほど大きな影響を与えました。
政治の大変動や天変地異の描写が優れるだけでなく、その激動時代に人間はいかに生きるべきか、鴨長明の生き方を通じて、人生の生きる意味を読者にも自然と問いかけられる哲学的な内容も含まれているところが長年愛されているところと言えるでしょう。
これが、現代の世相ともマッチします。
作者の鴨長明は、京都、下鴨神社の神職の跡取りとして生まれました。かなりの名家ですが、鴨佑兼との後任争いに敗れ、跡取りを追われてしまいます。
下鴨神社(京都)
波乱万丈の人生を生きながら、最後は四方3mの家(方丈)で、必要最低限のモノで隠居生活をする物語です。まさに日本最古のミニマリストかもしれませんね。
鴨長明は、61歳で世を去りました。当時としてはかなりの長寿だと思います。
方丈記が注目されている理由
方丈記が注目されているのは、当時と今とが世相が非常に似ているところにあります。
大火、辻風、(平清盛による思い付きから出た)福原遷都、大飢饉、大地震と災害に次ぐ災害、政治の大変動の時代が、まさに私たちが生きる時代とマッチするところが多いのです。
地震あり、津波あり、放射能漏れあり、コロナあり、ハリケーンあり、噴火あり、おまけに世界の政局は不安定を極めるという激動の時代の中で、私たちはどう生きるのがよいのだろうか、と不安になることも多いです。
そんなとき、方丈記は少なからずヒントを与えてくれるでしょう。
『ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず』で始まる名文句は、日常は毎回同じように繰り返されるが、全く同じ日はなく、すべては移り変わっていく。
そんな無常観の中で、生きる意味は何か、幸せとは何かを問いかける本です。
今回は、すらすら読める方丈記を参考にしました。
鴨 長明とは
鴨長明の生い立ち
鴨長明は京都の名所ある下鴨神社の神職(禰宜)の跡取りとして生まれ、何不自由のない暮らしをしていました。
しかし、後継者争いに敗れ、跡取りになることが叶わず、祖母の家に過ごすことになりました。家と言っても、広さは前の家と比べると10分の1程度、そして30歳くらいには、祖母の家からも追い出されたと言います。
栄光から挫折を味わった人生だったのですね。
災害に次ぐ大災害
彼が若い自分は大災害が引き続き起こります。
- 安元の大火(23歳)
- 地承の辻風(26歳)
- 福原遷都(26歳) 平清盛の思い付きによる遷都(大混乱)
- 養和の大飢饉(27歳)
- 元暦の大地震(31歳)
とよくも、まあ一生の間でここまでの大災害や政治的混乱が起こるものです。
こんな天変地異や政治的混乱の中で、裕福な家も混乱の中でひっちゃかめっちゃかになっていくのを目の当たりにします。
挫折経験
鴨長明自身も、下鴨神社の後継者争いに敗れ、家を追い出される挫折を味わいます。
しかし、和歌と音楽の才能に秀でた鴨長明は、後鳥羽上皇に寵愛され、47歳で和歌所守人(和歌の編集者)に任命されます。
さらには、後鳥羽上皇より、河合社(ただすのやしろ)の禰宜の職も推挙されるのです!チャンス到来!と喜びにむせび泣くも、またもや宿敵、鴨佑兼の大反対にあい、その夢も叶いませんでした。
かわりの神社の神職を推挙されるも、鴨神社の系列ではなくてはイヤだ、と後鳥羽上皇のご好意を断ってしまいます。(50歳)
ミニマリストとして自由を謳歌
こうして、挫折の後の境地として、
四方3mの四畳半ほどの広さの組み立て式の家(これが方丈記の由来です)を田舎に構え、継ぎ目は留め金で止め、災害時は分解可能という、大災害の無常を経験した鴨長明ならではの住居を作り、自ら住みます。
これが悲惨かというと、そんなことはなく、音楽と和歌を楽しみ、自然と共に季節の移り変わりを楽しみながら、ときには子供と戯れ、山菜を採り、ゆったりとした時間のなかで人生を楽しむようになったという境地が描かれています。
強制、規制、罰、人への配慮や偽善のない世界で、貧しさの中で自由を得たという随筆です。
当時も、出家というスタイルはあったのですが、鴨長明の場合は出家したわけでもなく、俗人隠居です。
念仏を唱えたいときは唱える。疲れたらやらない。という仏教に帰依したわけでもなく、
それで何が悪いという開き直りも見えます。
● 四方3mの四畳半ほどの広さの組み立て式の家に住み、災害時には分解して運ぶことができる。
● お金をかけない暮らしながら、あらゆる束縛や人間社会の煩わしさから解放されている。
● 自分の心に従い、自由に生きることを楽しんでいる。
● 教養と知性に溢れ、和歌と楽器、仏法の世界に生きている。
● その一方で、修行的な感じはなく、お経も唱えたいときに唱え、唱えたくないときは唱えない。
● 俗人隠居生活で、中途半端も肯定。
上流階級出身の人間が、自らのことを全て自分で行っていたのも、当時としては革新的な生き方だったと言えるでしょう。
これが、大災害と政治の大変動の前振りがあることで、非常に説得力があるのですね。
方丈記で学べること
方丈記を読むと、「年収90万円で東京ハッピーライフ」とも重なるところが多くありますね。こんな昔にシンプルライフを提唱していた方がいたというのが興味深いです。
今回はタライ・ラーマくんが独断と偏見で選んだシンプルライフの偉人伝の解説です(笑)。第1回は大原扁理さんが書いた「年収90万円で東京ハッピーライフ」を紹介したいと思います。タライ・ラーマくんこの本は最高でした![…]
鴨長明は、世は無常とばかり、消極的な生き方をしているようで、災害にびくともしない強い生き方をしているように思います。
鴨長明が生きた時代は、5つの大災害と政治の大変革が一度に押し寄せましたが、私たちが生きる世界も似たような状況です。
地震あり、津波あり、コロナあり、南海トラフ大地震が起こる確率もあり。
噴火も多いし、富士山の噴火も起こるかもしれない。AIで人間の職がどのようになるかわからない。
まさか!と思われることがまさかでなくなる時代です。
考えれば今現在も不安だらけな世の中です。
しかし、鴨長明のような生き方を知れば、予想に反して、苦しい生き方ではないこと、むしろ、彼のような生き方は、自由を謳歌できることがわかれば、私たちは生きることに楽観的になれます。
全ての時間が自分の時間となる生き方で、人のためにやるのではない趣味を持ち、裕福とは言わないまでも、自分自身のために費やせる時間はたっぷりある。
そんな生き方のオプションを知っていると、心が楽になりますね。
何とかなるもんだという、ほのかな自信と希望が湧いてきます。
解説している中野さんも述べられていましたが、若い時はピンとこなくても、年を取るにつれて共感する部分が多くなります。
クラーク博士の『少年よ!大志を抱け』という言葉も、少年だから大志を抱くのも良いかもしれません。
年を取るにつれて、大志とは違った楽しみも大切になってくるように思います。
今回、参考にした本はこちらです。中野さんは、すでにお亡くなりになっていますが、中野さんの体験と照らし合わせて書かれており、より理解が深まります。
戦時中の体験や関東大震災などがまさに方丈記の描写と重なるところがあるようです。
今の世の中とも重なるところがあるように思えますし、全く古さを感じません。
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